作家志望で三児育児中の40代主婦

長女(8歳)、次女(3歳)、長男(1歳)の育児をしながら、小説やエッセイを書いています。

「ソドムの市」女子高生にはトラウマレベルの衝撃映画

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ソドムの市

 

「絶対に観ておいたほうがいい映画だから! 今日の放課後、一緒に観に行こう」

 高校一年生の頃、クラスメイトのサヤカに誘われて観たのが、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の「ソドムの市」だった。

 当時、広末涼子やキムタクが主演の映画やドラマが大人気だったが、サヤカはそういったものに全く興味を示さず、キューブリック監督の「時計仕掛けのオレンジ」や寺山修司の「百年の孤独」をいつも大絶賛しているような、ちょっと変わった女子高生だった。

 私はサヤカの勧めてくる個性の強い映画や本、音楽などを「今まで見たことのないような異質な世界観をもったモノたち」として、割と好意的な感覚で受け入れていた。他の友人達は異質なモノを勧めてくるサヤカに嫌悪感を持っていたようだが、私は「新しい世界」を教えてくれる良い友人だと感じていた。

 学校が終わり、サヤカとバスにのって街はずれの小さな映画館へ向かった。客席はガラガラで、おそらく十人もいなかったと記憶している。客層は、五十代以上の年配の男女が多かった。パンフレットを見ると「歴史的名作!」と大きな文字で書かれている。

 名作、かぁ・・・。

 どんな物語なんだろう、と期待で胸が高鳴った。

 しかし、その期待は大きく裏切られた。観終えた後「どうしよう。多分、今日の夜眠れない。今後、トラウマになってしまうかも」と不安と恐怖で頭がはち切れそうだった。

 「ソドムの市」のストーリーはこうだ。

 権力者達が、田舎町から美少年、美少女達を誘拐し、豪華な屋敷に監禁する。権力者達は、美少年、美少女たちの排便を美しい食器に並べ、豪華なフランス料理でも食すかのように、微笑みながら味わったり、犬のように扱って虐めたりすることで興奮し、性的暴行を加える。ラストでは、美少年、美少女達の皮膚を剥いだり、目玉をくりぬいたりと、残虐な拷問をし、それを見て微笑むという恐ろしい地獄絵図が繰り広げられるという、とんでもない変態映画だった。

 上映中、何名かの観客が、口を押えて出ていく姿が見えた。私も気分が悪くなり、退席しようか大分迷ったが、隣に座るサヤカが目をキラキラさせてスクリーンを観ている様子を見て、席を立つことができなかった。

「いやぁ、素晴らしい映画だったね」

 放心状態の私に、サヤカは生き生きとした表情で言った。

 サヤカってすごいなー・・・。私はこんな映画に「素晴らしい」と言い切る彼女の人と違う感受性に感動すら覚えた。

 家に帰り、風呂に入っていても、食事をしていても「ソドムの市」の残虐シーンがフラッシュバックし「うっ」と気持ち悪くなった。そんな状態が一か月は続いた。

 なんで、あの映画が「歴史的名作」と名高いのだろう。分からない・・・。今までになかったような過激な描写のある映画を作ると「名作」と言われるのだろうか。人の心に衝撃を与える力が大きければ、内容どうこうではなく、評価は高くなるのだろうか。

 不思議だったのは、残虐シーンの衝撃度と同じくらい、変態権力者達の優雅な立ち居振る舞い、豪華な調度品、美しい音楽が高い芸術性を感じさせたことだった。下品すぎるものと誇り高く美しいものが同じレベルでもって成立しているというか、妙な世界観があることは確かだと思った。

 名作ってなんだろう。素晴らしい映画って、芸術って・・・。

 そんなことにグルグルと考えを巡らせるようになり、気が付くと、二十年以上たった今でも「ソドムの市」をふと思い出し、芸術や表現について考えることがある。一日で忘れてしまう映画はいくらでもあるが、何十年にもわたって、様々なことを考えるきっかけになった「ソドムの市」は、やはり名作と言わざるを得ない、と今では思うようになった。

 

 

嬉しかった娘の一言

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この母で

 育児に全く自信のない私にとって、嬉しい一言でした。

 私みたいなアホが母親で、この子たち不憫だなー、と思うことも多々ありまして。

 子供たちが成人した後でも「このお母さんで良かった」と思ってもらえるように、がんばりたいです。

 

死ぬほど驚いた、同窓会の話

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同窓会

 

 十年ぶりに開かれた中学校の同窓会で、見覚えのない女がいた。アニメオタクだったダサい女子グループ五、六人に混ざり、談笑している。

 ネズミ色のくびれのないワンピースや母親から借りてきたんじゃないかと思われるエンジ色のスカーフを巻いたオタク女達とは、明らかに人種が違う。栗色の髪を胸のあたりでカールし、Vネックの白いニットにAラインの黄色いスカート。細い足首に華奢なアンクレットが光り、五センチはある細いヒールを履いている。

 あんなイケてる女、竹下中学にいたっけ? 

 オタクグループといるってことは、あいつらの仲間? オタクの一人が脱皮して蝶に変身したとか?

 女は、シャンパングラスを持ったまま一人で移動し、竹下中学一のイケメン、原田君に近づいた。二人はグラスで乾杯し、談笑を始めた。女が原田君の肩に、笑いながらタッチすると、原田君は嬉しそうに鼻の下を伸ばしている。

 何だぁ、あの女~~!

 中学の頃、原田君に片思いしていた私は、腹の底からムカムカしてきた。私の原田君に気安く触るんじゃねぇっ!

「ねえ、あの女、誰!? 思い出せないんだけどっ」

 私は隣にいた友人・ミカの腕をグッと掴んで聞いた。

「イタタタ。どうしたのよ、一体」

「原田君といる、あの女よぉぉ」

「ああ、あれ。佐々木君。性転換したんだって。知らなかった?」

 ミカはあっさりとした口調で言った。

「綺麗になったよねー」

 うそっ! 佐々木君? 柔道部の?

 私は顎が外れるんじゃないかってくらい、口をアングリと開けて固まってしまった。

 

金を得るために、女子中学生がしたこと

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金が欲しい

 

 中学生の頃、可愛がっていた猫のポン太が血尿を出した。すぐに動物病院へ連れて行かなければ、と思い、母に病院代をせがむと「そんなお金ないよ」と、あっさり断られてしまった。両親はポン太に対して全くの無関心で、私が勝手に拾ってきて飼っていたのだ。

 ポン太はぐったりした様子で、食事も一切受け付けない。一刻を争う悪い病気だったらと思うと、心配で胸が張り裂けそうだった。何とかして、お金を調達しなければ!

 考えた末、私は家じゅうの本を古本屋に売りさばくことを思いついた。両親が読書家だったので、家には大量の本があった。両親が仕事で不在の時を狙って寝室に入り、壁一面の本棚から、ごっそり本を抜き取った。ハードカバーの本ばかりだったので、一冊三十~五十円くらいでは売れるだろう、と思い、とりあえず二百冊売ることにした。

 両親の寝室から自室まで、本を抱えて何十回も往復し、二百冊の本を自室に運び込んだ。より高値で売れるよう、一冊ずつ丁寧に布巾で拭い、埃や汚れを落とした。私のベッドの上では、ポン太が丸くなって寝ている。固く目を閉じ、頬の辺りが以前より細くなっていた。食欲がないので、痩せてきていたのだ。昔、テレビで見た「猫のミイラ」の姿が頭に浮かび、ブルっと身体が震えた。骨と皮だけになったミイラは、焼きすぎたスルメのように、カラカラに干からびていた。

 勝手に本を売ったことが両親に知れたら、殴られるかもしれない。でも、いいんだ。命より大切なものなんて、この世にあるもんか! いいんだ、これで・・・。

 本を拭きながら、いつのまにか涙がこぼれていた。私は小さい頃から内気で集団になじめない性格だったので、学校が大嫌いだった。そんなストレスフルな生活を癒していたのは、自室で猫と過ごす時間だ。ポン太の柔らかい毛を撫でていると、心が癒され、心地よさそうな寝顔を見ていると、胸がふわんと温かくなった。大事なポン太を助けるためなら、両親に怒られても、殴られても、きっと耐えられる。絶対に失いたくない、大切な相棒なのだ。

 その時、家の電話が鳴った。東京に住んでいる年の離れた姉からだった。世間話をしているうちに、猫の病院代を作るために、家中の本を売ることにしたんだ、と話すと、姉は「やめな!」とドスの効いた声で言った。

「本ってのは、人にとっては、ものすごい宝物なんだ。私が今すぐお金を送ってやるから、本は売るな」

 姉は一時間後、ゆうちょで一万円を送金してくれた。私はすぐにポン太を動物病院へ連れて行き、注射を一本打ってもらった。大した病気ではなく、服薬ですぐに治る軽い症状だった。

 ポン太はその後、元気になり、私の大事な相棒として共に生きてくれた。

 あれから成人し、私は両親と同様に読書が大好きになった。人生を変えるような本に何冊も出会った。一生、傍に置いておこうと大切にしている本もある。良書を読んだ後「あの時、勝手に本を売るなんて愚行をせずに良かったなぁ」としみじみ思う。今でも、姉には感謝である。

 

 

 

ほろ苦い失恋

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失恋

 

 高校生の頃、友人のエリナが朝から浮かない顔をしていた。いつも大声で「ギャハハ!」と笑い、クラスのムードメーカー的存在の彼女が、暗い顔で一言も話さない。

「何かあったの?」

 休み時間、心配になり声をかけてみた。

「あのね・・・。結婚してたんだって。子供も二人いるって・・・」

 エリナは瞳に涙をいっぱい溜め、震えた声で言った。

 えっ! どういうこと? まさか、エリナ、良からぬ男に引っかかって? いや、でも高校生でそんなっ。

「結婚って誰が!? どういうこと?」

 私はエリナの両腕を掴み、きいた。

「吉井さんが・・・。イエモンの・・・」

 目から大粒の涙をボロボロとこぼし「うう~っ」と唸っている。

 よ、よしいさん~?

 吉井さんとは「ザ・イエロー・モンキー」というロックバンドのイケメンボーカリストである。

「ああー、なーんだ。吉井さんかぁ。驚かせないでよー」

 私はアハハー、と呆れて笑った。

「笑いごとじゃないっ! ずっと独身だと思ってたのにぃっ」

 エリナは、キッ! と私を睨みつけた。

「そんな、泣くほどのことー? てっきりエリナが不倫でもしてたのかと思って、心配したじゃん」

「私は吉井さん以外、好きにならないっ」

 エリナはハンカチで顔を覆い「うえーん」と子供みたいに泣いた。

 エリナの失恋を軽く笑ってしまったせいで、しばらく口をきいてもらえなかった。

 当時の私は、そこまで深く思い入れのある芸能人がいなかったため、エリナの心理は理解できなかったが、二十数年経た現在(四十歳)なら、少しは分かる。

 私は「すかんち」というバンドのギタリスト兼ボーカリストROLLYの大ファンなのだが、彼が結婚発表でもしたら、泣いてしまうかもしれない。

 ROLLYの歌うラブソングを聴いて「ああ、こんなに想われて幸せ・・・」と、なぜか自分に向けてROLLYが歌ってくれている錯覚を起こしているのだ。もし、ROLLYが結婚していたら「この素敵な歌詞も、きっと奥さんを想って書いたのね・・・」と、寂しい気持ちになってしまうだろう。ファンとして、ROLLYの幸福を願っているので、彼には幸せな家庭を築いてもらいたいなぁと思いつつ、でも、特定の誰かのものになってしまうなんて嫌だ、悲しい、と矛盾した気持ちを抱いている。これがファン心理というものだろう(私だけ?)

 

 四十歳になったエリナは、今でも吉井さんのファンである。当時の奥様と別れ、タレントの真鍋かをりさんと再婚した吉井さん。

「なんで、あんな女と!」

 ブツブツ文句を言っているエリナは独身で、吉井さんへの愛を貫いている。一途なエリナもすごいけど、何十年にも渡って、エリナの心を虜にしている吉井さんも大したもんだなー、とテレビに映る吉井さんを観て、関心している。

 

 

 

無垢な質問をする長女(8歳)

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娘よ・・・

ニコニコ、笑顔でスゴイことを言う長女(8歳)。

話してて飽きないよ。

おもしろいなー、子どもの発言って。